なくした免許証や保険証を悪用されてお金を借りられてしまったらなくした本人に返済義務はあるか
どこで落としたのか、家の中で紛失したのか、見当もつきません。
仮に屋外で落としていた場合、拾った誰かがその運転免許証を悪用し消費者金融や闇金などで借金をしたら、Aさんにその借金の支払い義務はあるのでしょうか?
この場合Aさんは、落とした免許証を拾った誰かが消費者金融で借りた場合、自分が払わなければいけないのかと心配していますが、やはり本人が契約していませんから、Aさんは支払わなくて構いません。
法的に見ると、落とした本人は契約していませんので、全く契約の効果が成り立たず、本人が借りているわけではないとみなされます。
ただし「本人以外の人が契約する」ということも世の中にはあります。
例えば、代理人というのがあり、その代理人として何か契約をしているという事であれば、その代理人が「然るべき権限のある代理人」であれば、勿論然るべき契約が成立するいうことになります。
そして契約が成立するという事であれば、代理人ではなく本人にその契約の効果が及ぶという事になります。
この場合は本人が「この人に頼みます」という委任状を渡したり、司法書士や弁護士などの法律の専門家に頼んで正式な段階を踏んで委託している場合です。
そして、仮に代理人と称していても、権限がない代理人というものがあります。
これを無権代理人という言葉を使い、仮にその無権代理人が何か契約をしたというときは、当然その契約の効果は本人には及びません。
ですから、「権限を与えているかどうか」は、委任状等を証拠として提示することが必要だということになります。
また、第三者がなくした免許証などを使って勝手に闇金からお金を借りたりして、闇金業者が免許証をなくした本人に取立てに来た場合には、当然違法業者ですから警察にすぐ通報するということが必要です。
もしそのような請求や督促や取立てが来た場合は、その業者の名前や電話番号、担当者名などをきちんとメモしておき、ただ「取り立てられた」ということだけではなく、具体的に「誰に、いつ、どういう状況で」という事を記録に残しておくということが必要になってきます。
電話での通話なども、録音装置のある電話なら録音しておき、きちんと証拠を残しておくという事が大事になってきます。
闇金の場合は出資法に違反していて、且つ、本人ではないのに勝手に契約しているということで、民法上も支払う必要はなく、闇金の行為自体が刑事罰の対象になります。
従って、運転免許証や保険証をなくして、それを悪用されて他人に借金をされたとしても、本人が払わなければいけないということはありません。
そもそも、免許証等を落としてしまった場合は、まず最初に警察に届出ることが大事です。
財布ごとなくしてカードなども一緒に入っているかも知れない場合には、カード会社にもすぐ届出をすることが必要になります。
警察にも「この時に運転免許証をなくしました」という届出をしておくと、後で違法な請求が来たりしてトラブルになったときにも証拠になります。
今回のケースについてまとめると、運転免許証を落としてしまい、誰かがそれを使って悪用して借金をしても、落とした本人にはその借金を支払う義務は生じないということになります。
ただし、落とした場合は、速やかに届出て再発行することが大事です。
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