借用書もなく他人にお金を貸したら返してもらえない?
彼は「借用書を書く」と言ってましたが、Aさんは「婚約したのだから借用書は書かなくていいよ」ということでした。
しかし1年経っても返してくれる気配がなく、婚約した彼が約束を守ってくれるのかどうかが気になり「貸したお金はいつ返してくれるの」と聞いたところ、彼は「あのお金はくれたんじゃないの?」と言ってきました。
Aさんは「あなたが1年後に返す約束をした」と言うと、彼は「借用書はあるのか?」と聞いてきました。
借用書もなく貸したお金は、諦めるしかないのでしょうか?

今回のケースは、お金を貸したのかあげたのかの主張が対立するということになります。
まずお金を貸したということになれば民法上は「金銭消費貸借契約」という言葉を使います。
金銭消費貸借契約が成立する為には、借りたお金を返すと約束をすることと、お金を受け取ることの2つの要件が必要となってきます。
従って、口約束だけではなく、実際にお金を受け取って初めて金銭消費貸借契約の効力が出てきます。
金銭消費貸借契約の効力というのは、借りた借主については、返還の時期にお金を返す義務があるということになります。
その返還の時期というのは、契約に定めがあるかどうかによって異なります。
契約に定めがある場合は、確定期限を定めた場合と不確定期限の2つがあります。
確定期限というのは、平成○年○月○日に返しますという約束をした場合のことをいいます。
不確定期限というのは、例えば海外に単身赴任で行く場合に、帰国したら返して下さいという場合です。
定めがない場合には、返還の時期はいつでもいいということになります。
従って1ヶ月以内に返して下さいなどと、相手方に相当期間を設けて催告をします。
そして、返還時期を過ぎてしまうと、返還時期に返還義務を履行しなかったということで、金銭であれば「金銭の遅延利息」という損害賠償が発生してきます。
また、今回のように借用書がなく口約束だけという場合でも金銭消費貸借契約は法律上は成立します。
ただし、口約束だけで契約は成立しますが、裁判などになってしまった場合には立証をしなければいけません。
裁判になった場合には、返還することを約束したのかどうか、お金の授受があったのかどうかを立証しなければなりませんので、現実的には借用書を書いておいた方がいいといえます。
借用書がない場合の立証は、返すと約束したのかどうかと授受があったのかどうかを立証しなければならず、まず授受があったかどうかは、銀行の口座に振込んだ証拠で、振り込み書の控えなどがあれば、それで立証になるといえます。
あとは、返すという約束をしたかどうかですが、その場に第三者が居たのであれば、その第三者の証言を貰うとかいう形で立証しなければならず、立証することはなかなか難しいです。
立証の方法がなくなってしまわないように、借用書をきちんと書いておくことが必要になってきます。
一般的に恋人や親族関係は、借用書を書かない場合が多いんですが、往々にしてそういうケースの場合争いになりますから、身近な存在でも借用書はお互いの為に書くことが大事です。
関連記事
-
-
承諾なしに家族の借金の保証人にされてしまったら
Aさんは、独立して一人で暮らしていますが、先日、実家の父親が借金をした際に、Aさんを保証人にしたということを聞かされました。 Aさんはこの父親の借金について今まで何も聞かされておらず、保証人になることを承諾した覚えもありません。
-
-
友人同士の借金の時効の援用権と喪失について
学生時代の友人と15年振りに再会したAさんは、15年前に友人から1万円を借りていたのを思い出しました。 Aさんは「利息は負けてくれ」と言って、その場で友人に1万円を返しました。 しかしその後日、Aさんは借金は10年で時効を迎えることを知り、 …
-
-
連帯保証人になっていた場合の相続について
先日、父親を亡くしたAさんは、葬儀を終了させ、遺産相続の手続きをすることになりました。 亡くなった父親には財産や不動産は特に無く、借金も無いと思っていたAさんは、相続の手続きも簡単に済むと思っていたのですが、父親が友人の借金の連帯保証人にな …
-
-
出て行ってしまった嫁のパチンコで作った借金を旦那は払う必要があるか
Aさんの奥さんは3年ほど前からパチンコにはまりはじめ、2年前からとうとう消費者金融から借金をし始めてしまい、現在では総額80万円の借金があります。 ある日突然奥さんが家を出てしまい、途方に暮れていたところに消費者金融から旦那さんに対して、奥 …
-
-
借金を返せなくなったときに放置したケースと自己破産
現在60歳のAさんには、サラ金やクレジットカードなどでおよそ1000万円の借金があります。 これまで少しづつ返済してきましたが、最近は「もう完済できない」と思うようになりました。 自己破産することも考えたAさんですが、手続きにいくらかかるの …
-
-
分割払いでお金を貸したが返済が滞っている場合、途中で一括返済を求めることができる?
Aさんは友人に分割返済の約束で50万円を貸しました。 ただし最終的な返済期限だけを取り決め、1回あたりの返済額や回数は細かく決めませんでしたが、この内容で友人に借用証書を書いてもらいました。
-
-
離婚した夫が失業した場合、養育費は払ってもらえない?
A子さんは小さな会社を経営している夫と5年前に離婚し、子供を引き取り毎月10万円の養育費を受け取っています。 しかし先日、別れた夫から連絡があり、「経営している会社が倒産してしまったので来月から養育費が払えない」と言われてしまいました。
-
-
不利益事実の不告知があり購入したマンションの契約を解除できるケース
部屋からの眺めと日当たりのよさにこだわり、マンション探し続けていたAさんは、ついに希望に合う物件を見つけ、マンションを購入しました。 購入したマンションは、販売業者が「眺めも日当たりも良好です」と勧めてきたもので、その言葉を聞いた上でAさん …
-
-
お金を返したくても相手と連絡がつかず返せない場合は供託を利用しよう
Aさんは5年前に会社を設立したときに前の会社の同僚のBさんから100万円を融資してもらい、その際に返済期日を決めて借用書も作りました。
-
-
無計画に自己破産すると免責がおりない?
A子さんは買い物が大好きで高級ブランドのバッグや服、アクセサリーなどをいつも買い漁っています。 A子さんの職業は中小企業の会社員なので特に給料がよいわけではありません。 最近は、ローンの支払いや消費者金融からの借り入れなどで借金が増えていま …