トラブル解決ナビ

日常生活に潜んでいるトラブルを解決するための法律や事例を紹介しています。

お金の貸し借りや賃貸借契約で効果を発揮する公正証書とは

Oさんは今度雑貨屋を開くことになり、それを友人に話すと「そういうことなら私も協力する」と、100万円を貸してくることになりました。
友人の厚意に対する誠意から、「いくら友人でもちゃんとした借用書を作ろう、利子は多めに払う」と言ったそうなんです。
すると友人は「そうしてくれるとありがたい。利子は儲かったら払ってくれればいいけれども、100万円は将来的に返してくれないと困るから、ちゃんとした公正証書がいいだろう」という話になりました。
そうしようということでお互いに納得し同意したのですが、そもそも公正証書というのは一体どういうものなんでしょう?
お金の貸し借りや賃貸借契約で効果を発揮する公正証書とは

公正証書とは読んで字のごとく、「公に正しいことを証明する書類」で、公証人という法務局の公務員が、第三者的な立場で作成する書類のことをいいます。
もっとも、公証人は「国家公務員法で定められた公務員」ではないのですが、広い意味では公務員といえます。
公正証書で一番典型的なものは、大家さんからアパートを借りる場合の賃貸借の契約書や、遺言書、お金の貸し借りの契約、売買契約書などがあります。

公正証書は、法律行為に関する書面を作るということで、契約の関係であれば、家庭内の夫婦間の取り決めなどでも、公正証書に残してということも場合によっては可能です。
公正証書は今回のようにお金の貸し借りで特に効力を発揮します。
例えば消費者金融などでお金を借りる場合、前もって公正証書を作るための委任状をお金を借りた人からもらっておくというのが実務的です。

消費者金融会社などでは、融資の申し込みの際に、公正証書作成の委任状を貰っていますので、お金を返せなくなったという場合には、最初に貰った公正証書の委任状に基づいて公正証書を作ることが多いです。

公正証書と普通の一般的な借用書との違いは、普通の借用書は私製証書ですが、裁判になった場合は公正証書の方がはるかに証拠能力が高いです。

公正証書に書いてあることを守らなかった場合は、執行受諾文言あるいは執行認諾文言というものが付帯されていれば、裁判で判決をもらわなくても、直接強制執行ができるということになっています。
執行認諾文言というのは、お金を返さなかった場合、差押えなどの強制執行をされても文句はありませんということを書いているものです。
普通一般の場合には、借用書があり、期限が来てもお金を返さないということになれば、裁判所に訴えを提起して、お金を返しなさいという判決をもらってから強制執行に手続きということになりますが、執行認諾文言付きの公正証書があれば、裁判手続きは不要で、すぐに強制執行ができるということになります。

では、公正証書を作成する場合、例えばお金の貸し借りの場合は貸す人と借りる人、アパートの契約の場合は大家と借主の当事者が公証役場に行って、公証人に「このような内容の契約をしたので、公正証書を作ってください」と言うということになります。
代理人でもかまいませんが、代理人の場合には契約当事者本人から委任状をもらって、代理で公正証書を作ることになります。

本人もしくは代理人が出頭して、公正証書にする書面をどのように説明していいのかわからなかったり、内容をすぐにまとめきれない場合もあるかと思います。
そのような場合には、弁護士や司法書士に頼んで前もって案文を作っておき、それを基に公証人に証書を作ってもらうというのが一番良いと思います。

そして、できあがった公正証書の原本は公証役場に保管されることになります。当事者には正本を交付することになり、必要であれば謄本も交付することになります。
公正証書を作った後でその内容を変更するときは、契約内容の変更になりますので、同じように公証役場に行き、変更の契約をすることになります。

 - お金に関するトラブル, 不動産に関するトラブル, 生活のトラブル , ,

  関連記事

兄弟の借金の返済をしつこく催促された場合、支払う必要はあるか

Aさんには兄がいて、兄は飲食店を営んでいましたが、2年程前から次々と近所にライバル店ができ、客足はどんどん遠のいて、先月ついにお店をたたむ事になってしまいました。 Aさんはお店の後片付けを手伝う事にしたそうなんですが、兄はショックのためなか …

お金を返したくても相手と連絡がつかず返せない場合は供託を利用しよう

Aさんは5年前に会社を設立したときに前の会社の同僚のBさんから100万円を融資してもらい、その際に返済期日を決めて借用書も作りました。

出世払いの借金の返済期限はいつ?

3年前、出世払いで返すからと借金を頼み込んできた友人に、現金10万円を貸しました。 この借金については契約書を交わしているわけではなく、特に返済の期日を決める事もしていません。 これまでに何度か返済を迫りましたが、まだ出世していないからと友 …

マンション購入の契約のキャンセルと契約手付金について

展示用のマンションを見に行きすっかり気に入ってしまい、その日のうちに自宅で業者とマンションを買う契約をし、手付金50万円を渡しました。 しかし、改めて考えたときに、ローンの月々の支払いなどに無理がある気がしたため、3日後にキャンセルを申し出 …

飲み会の中止を予約していた店に伝え忘れたら損害賠償が必要?

Aさんは友達10人が参加する飲み会の幹事を任され、居酒屋に予約を入れました。 ところが当日、飲み会に参加するはずだった10人のうち8人が急に来られなくなってしまいました。 Aさんは仕方なくその日の飲み会の中止を決定しました。

年齢を偽って借金をした未成年の息子の借金を支払う義務は親にあるか?

Aさんの息子は19歳の学生で、親元を離れて一人で住んでいますが、先日息子から消費者金融から45万円の借金をしてしまい、自分では払えないから払ってくれないかという連絡がありました。 どうやら息子は19歳であるということを相手方の消費者金融に告 …

出て行ってしまった嫁のパチンコで作った借金を旦那は払う必要があるか

Aさんの奥さんは3年ほど前からパチンコにはまりはじめ、2年前からとうとう消費者金融から借金をし始めてしまい、現在では総額80万円の借金があります。 ある日突然奥さんが家を出てしまい、途方に暮れていたところに消費者金融から旦那さんに対して、奥 …

愛人契約や賭け麻雀などの不法な契約が破られた場合、相手に請求できるか

Aさんは結婚しているのにもかかわらず、B子さんに惚れ込んでしまい「ずっと一緒にいて欲しい、必要なお金は払うから」と提案してみたところ、B子さんは了承し、男女の関係を持ちました。 それで、最低でも月に3回以上は会い、月々の契約料として、Aさん …

なくした免許証や保険証を悪用されてお金を借りられてしまったらなくした本人に返済義務はあるか

Aさんは先日運転免許証をなくしてしまいました。 どこで落としたのか、家の中で紛失したのか、見当もつきません。 仮に屋外で落としていた場合、拾った誰かがその運転免許証を悪用し消費者金融や闇金などで借金をしたら、Aさんにその借金の支払い義務はあ …

借用書もなく他人にお金を貸したら返してもらえない?

Aさんはあるとき、婚約中の彼に、1年後の今日に必ず返すという約束で10万円を貸しました。 彼は「借用書を書く」と言ってましたが、Aさんは「婚約したのだから借用書は書かなくていいよ」ということでした。