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友人同士の借金の時効の援用権と喪失について

学生時代の友人と15年振りに再会したAさんは、15年前に友人から1万円を借りていたのを思い出しました。
Aさんは「利息は負けてくれ」と言って、その場で友人に1万円を返しました。
しかしその後日、Aさんは借金は10年で時効を迎えることを知り、友人から借りていた1万円も時効が成立していたと気付きました。
Aさんは慌てて友人に電話をして「時効が成立していたからあの1万円は返してくれ」と頼みました。
友人はAさんに1万円を返さなくてはいけないのでしょうか。
友人同士の借金の時効の援用権と喪失について

今回の事例のAさんは友人から1万円借りているということを法律的にいうと「貸金債権」といいます。
その貸金債権は「権利を行使できる時から10年で消滅時効が完成する」となっています。
この「権利を行使できる」というのは、「貸しているお金を返してくれと請求できる」ということです。
それから10年で時効が完成すると、権利が消滅して「返してくれとは言えなくなる」ということになります。
時効の期間は債権によって様々ですが、一般的な貸金債権については10年となっています。

今回は15年振りにAさんと友人が会ったので、貸している友人が取立てできる時から10年以上が経過しています。
従って、貸している友人としては時効が完成していますから、「返して下さい」ということは言えなくなるということになります。

時効は借りている方が「その時効の利益を受けよう」という意思表示をしなければ、その債権は消滅しません。
借りている方が積極的に「もう時効が完成しているから、貸金債権は払いません」と言わないといけないということです。
これを「時効の援用」と言い、「時効の利益を受けますよ」という意思を相手方に対して表示しないと、貸金債権は消滅しないということになっています。

今回のように「時効が完成した後で1万円を返した」という場合、「時効の援用」の「援用権を喪失した」ということになります。
結論から言うと、時効が完成した後に知らなくて返してしまったということであれば、最高裁の判例では「もはやそれは援用権を失ってしまった」となります。
時効の援用権を失ってしまったということは、「時効の権利を行使する事ができない」ということになります。
従って今回のケースでは友人はAさんに1万円を返す必要がないということになります。

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