友人同士の借金の時効の援用権と喪失について
Aさんは「利息は負けてくれ」と言って、その場で友人に1万円を返しました。
しかしその後日、Aさんは借金は10年で時効を迎えることを知り、友人から借りていた1万円も時効が成立していたと気付きました。
Aさんは慌てて友人に電話をして「時効が成立していたからあの1万円は返してくれ」と頼みました。
友人はAさんに1万円を返さなくてはいけないのでしょうか。

今回の事例のAさんは友人から1万円借りているということを法律的にいうと「貸金債権」といいます。
その貸金債権は「権利を行使できる時から10年で消滅時効が完成する」となっています。
この「権利を行使できる」というのは、「貸しているお金を返してくれと請求できる」ということです。
それから10年で時効が完成すると、権利が消滅して「返してくれとは言えなくなる」ということになります。
時効の期間は債権によって様々ですが、一般的な貸金債権については10年となっています。
今回は15年振りにAさんと友人が会ったので、貸している友人が取立てできる時から10年以上が経過しています。
従って、貸している友人としては時効が完成していますから、「返して下さい」ということは言えなくなるということになります。
時効は借りている方が「その時効の利益を受けよう」という意思表示をしなければ、その債権は消滅しません。
借りている方が積極的に「もう時効が完成しているから、貸金債権は払いません」と言わないといけないということです。
これを「時効の援用」と言い、「時効の利益を受けますよ」という意思を相手方に対して表示しないと、貸金債権は消滅しないということになっています。
今回のように「時効が完成した後で1万円を返した」という場合、「時効の援用」の「援用権を喪失した」ということになります。
結論から言うと、時効が完成した後に知らなくて返してしまったということであれば、最高裁の判例では「もはやそれは援用権を失ってしまった」となります。
時効の援用権を失ってしまったということは、「時効の権利を行使する事ができない」ということになります。
従って今回のケースでは友人はAさんに1万円を返す必要がないということになります。
関連記事
-
-
友人が借金を返してくれない場合、どのように催促すべきか
会社員のAさんは、先日学生時代の友人と偶然9年ぶりに再会しました。 久し振りの再会で会話が弾んだAさんと友人でしたが、Aさんはその席で9年前にその友人に60万円を貸していたことを思い出しました。
-
-
契約書をなくして再度和解した後に前の契約書を発見した場合どちらの契約が有効か
Aさんは、昨年友人に「期日は今年の12月で全額一括で返し、利息として1万円を上乗せする」という条件で20万円貸しました。 条件と同じ内容の借用書を書いてもらいましたが、Aさんはその借用書をなくしてしまいました。
-
-
友人同士の借金で利息は請求できる?
3年前友人に泣き付かれ、仕方なく現金50万円を貸したAさんは念のため、返済の時期などを記した契約書を交わしていました。 そして先日、その50万円が契約書通りの日付で、いさぎよく手元に返ってきました。
-
-
お金の貸し借りや賃貸借契約で効果を発揮する公正証書とは
Oさんは今度雑貨屋を開くことになり、それを友人に話すと「そういうことなら私も協力する」と、100万円を貸してくることになりました。 友人の厚意に対する誠意から、「いくら友人でもちゃんとした借用書を作ろう、利子は多めに払う」と言ったそうなんで …
-
-
連帯保証人になっていた場合の相続について
先日、父親を亡くしたAさんは、葬儀を終了させ、遺産相続の手続きをすることになりました。 亡くなった父親には財産や不動産は特に無く、借金も無いと思っていたAさんは、相続の手続きも簡単に済むと思っていたのですが、父親が友人の借金の連帯保証人にな …
-
-
家賃を滞納したらすぐに出て行かなくてはならない?
Aさんは、新築のマンションを借りて1年経ちました。 先月うっかり家賃を払うのが3週間ほど遅れてしまいました。 遅れるのはこれで3回目で、それまで何も言わなかった大家さんから、3回も遅れたので出て行ってもらうと言われたそうなんです。
-
-
差押えと仮差押えの違い
Aさんは、世話になっている叔父に「このところ会社が危なくなった。500万円ぐらい貸してくれないか」と言われ、借用書をちゃんと書いてもらい、快く500万円貸しました。 ところが、相当資金繰りが苦しいらしく、遂には自宅を売って事業資金に充てるら …
-
-
飲み会の中止を予約していた店に伝え忘れたら損害賠償が必要?
Aさんは友達10人が参加する飲み会の幹事を任され、居酒屋に予約を入れました。 ところが当日、飲み会に参加するはずだった10人のうち8人が急に来られなくなってしまいました。 Aさんは仕方なくその日の飲み会の中止を決定しました。
-
-
分割払いでお金を貸したが返済が滞っている場合、途中で一括返済を求めることができる?
Aさんは友人に分割返済の約束で50万円を貸しました。 ただし最終的な返済期限だけを取り決め、1回あたりの返済額や回数は細かく決めませんでしたが、この内容で友人に借用証書を書いてもらいました。
-
-
保証人でないのに家族の借金の返済をせまられたら
Aさんは両親と一緒に暮らしていますが、あるとき父親が株式投資に手を出して失敗し借金を作ってしまいました。 複数の貸金業者から借り入れをしているようで、貸金業者が度々自宅を訪れたり、電話をかけてきたりします。 Aさんがその対応をしていたところ …