子供が親に断りもなくお年玉で高価な買い物をした場合、取り消すことはできるか?
そんなある日、娘がとても高価そうなネックレスをして帰ってきた姿を見てAさんはびっくりしました。
娘にそのネックレスについて聞いてみたところ、「今日お年玉で買ってきた。値段は5万円したけど、私のお年玉で買ったから文句ないでしょ」と言い返してきました。
お年玉自体は、これまではAさんが管理してきたのですが、今年の分に関してはまだ娘が持っていたままでした。
中学生にしては高価なこの買いものを取り消すことはできるのでしょうか?
今回のケースは、中学3年生の未成年者が、単独で売買契約ができるかどうかがポイントになります。
民法では、未成年者は「制限行為能力者」に該当するという規定があり「制限行為能力者」とは、「有効に法律行為をする能力が制限されている者」を指します。
判断能力が不十分な者が取引することによる損害を防止する為にこのような制度が設けられています。
具体的な制限としては、未成年者の法律行為には原則として法定代理人、通常であれば親の同意が必要となります。
単独では未成年者は売買契約ができず、原則、法定代理人である親の同意が必要だということです。
親がいないという人の場合には後見人という人が法定代理人となります。
売買契約において、法定代理人の同意がない場合には、その売買契約は取り消しの対象になります。
例外として、親の同意がなくても未成年者が単独で売買契約ができるケースは大体4つほどあります。
1つ目は単に権利を得たり、または義務をまぬがれたりするような行為。
贈与を受けるということや債務を免除してもらうということが、該当します。
2つ目は、目的を定めて処分を許した財産の場合。
文房具代としてあげる、あるいは洋服代としてあげるというように、目的を定めて許した場合が該当します。
3つ目は、目的を定めないで処分を許した財産の場合。
一般的に、小遣いがこれに該当します。
4つ目は、営業の許可を与えられた場合、その営業に関する法律行為を全て親の同意なしで行えます。
未成年者に飲食店を経営させるという事例が典型的な例になります。
このように原則として、未成年者の法律行為については法定代理人の同意が必要だということですから、同意がなければ取り消しの対象になります。
そうすると、未成年者と法律行為をした相手方には、取り消されるのか取り消されないのかわからないという相当なリスクがあります。
そこで民法ではそのリスクを回避する為に、未成年者と取引をする相手方を保護する規定が2つあります。
1つは、未成年者なのに「自分は成人だ」と嘘をついて、詐術を用いて法律行為をした場合には、取消権は行使できないとなっています。
2つ目としては、相手方が法定代理人に対して取り消すか、あるいは追認するかということの催告権を与えています。
今回のケースではお年玉ということなので、一般的にお小遣いに含まれると考えられます。
即ち、「目的を定めないで許した財産」ということになり、原則として「同意がなくても有効に法律行為ができる」となります。
ただし、そのように目的を定めないで処分を許した財産、お年玉やお小遣いを親御さんがしっかり管理しているということであれば、「親御さんの同意が必要である」となります。
今回の例では、これまではお年玉はAさんが管理していたんですけど、今回に限っては管理する前の状態だったということですが、これは「そもそも管理といえるかどうか? 」と解釈されます。
従って、今年の分は管理していなかったということになり、これは自由に使えるお金とみなされ、取り消しの対象とはならないということになります。
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