お金を返したくても相手と連絡がつかず返せない場合は供託を利用しよう
その借用書の返済期日が昨年で、AさんがBさんの口座にお金を振り込もうとしたらすでにその口座が閉鎖されており、Bさんも元の会社をすでに退職していて自宅も引っ越してしまったようで居場所がわからない状態でした。
探す当てもなく一年が過ぎてしまったところ、先日Bさんから4年前に貸したお金を返してほしいと急に連絡がありました。
その頃、返すために取っておいたお金も使わざるを得ない状況になり、手元にはもう残っていませんでした。
AさんはBさんに事情を説明しましたが、お金に困っているから返してほしいと言われました。
また、借用書の期日は過ぎているのですぐに返せないならなら延滞金も払ってもらうと言われました。
Aさんは借用書に書いてある分は返済しようと思っていますが、この場合延滞金まで払う必要はあるのでしょうか。

結果だけを見てみると、Aさんが期日にお金を返していなく、その後の債権者からの督促に対してもお金を返していませんので、Aさんに債務不履行があるのは明らかです。
債務不履行ということになれば、損害賠償金としての延滞金あるいは延滞利息を支払う必要があります。
ただし今回のケースは、Aさんが期日にお金を返せないという理由がありました。
これがBさんの方に返そうしたが口座が閉鎖されていたこと、会社も退職してその居所も全然分からなかったというのがあり、その分は債権者の落ち度や責任、過失があるのではないかということになります。
そこで民法は、お互いに過失があるという場合には過失相殺というものが認められています。
交通事故が一番典型的な過失相殺の例で、車を運転する方が歩行者をはねてしまった場合、不法行為ですから損害賠償となりますが、歩行者の方にも、急に飛び出したり、横断歩道でないところを渡っていたりとなんらかの責任がある場合、その分を過失相殺ということで、全額負担ではなくある程度減額しようということになります。
今回のケースは、Aさんに債務不履行があり、延滞金を支払う必要はありますが、債権者のBさん責任もあるので、延滞金から過失相殺することで、減額が認められるということになります。
本来は借りたお金ですから、きちんと手元に保管しておくことが必要でしたが、実際にAさんからすると、返そうと思っていた時に相手がどこにいるかわからなかったということでした。
このようなトラブルを防止するために、民法では供託という制度を設けています。
弁済供託といい、あらかじめ債権者が受領を拒否している、受け取らないとしている場合や、受領不能で返したくても返せない状態である場合、債権者不確知で債権者が誰なのかわからない場合などの原因があれば供託できるということになります。
従って、今回は相手がどこにいるかわからなかったので、供託できる状態でした。
供託を返済の期日にしていれば、債権の消滅原因になるので返したことと同じことになり、そうするとそこからの延滞金というのはもちろん発生してこないということになります。
また、供託は法務局のほうにするので、貸した側が供託したお金を受け取るには、法務局の方からこの人がこういう理由で金いくらの供託されましたという内容の通知がきます。
その通知を法務局の方に持っていって手続きをすればお金を返してもらえます。
関連記事
-
-
出世払いの借金の返済期限はいつ?
3年前、出世払いで返すからと借金を頼み込んできた友人に、現金10万円を貸しました。 この借金については契約書を交わしているわけではなく、特に返済の期日を決める事もしていません。 これまでに何度か返済を迫りましたが、まだ出世していないからと友 …
-
-
出て行ってしまった嫁のパチンコで作った借金を旦那は払う必要があるか
Aさんの奥さんは3年ほど前からパチンコにはまりはじめ、2年前からとうとう消費者金融から借金をし始めてしまい、現在では総額80万円の借金があります。 ある日突然奥さんが家を出てしまい、途方に暮れていたところに消費者金融から旦那さんに対して、奥 …
-
-
連帯保証人になっていた場合の相続について
先日、父親を亡くしたAさんは、葬儀を終了させ、遺産相続の手続きをすることになりました。 亡くなった父親には財産や不動産は特に無く、借金も無いと思っていたAさんは、相続の手続きも簡単に済むと思っていたのですが、父親が友人の借金の連帯保証人にな …
-
-
借用書もなく他人にお金を貸したら返してもらえない?
Aさんはあるとき、婚約中の彼に、1年後の今日に必ず返すという約束で10万円を貸しました。 彼は「借用書を書く」と言ってましたが、Aさんは「婚約したのだから借用書は書かなくていいよ」ということでした。
-
-
無計画に自己破産すると免責がおりない?
A子さんは買い物が大好きで高級ブランドのバッグや服、アクセサリーなどをいつも買い漁っています。 A子さんの職業は中小企業の会社員なので特に給料がよいわけではありません。 最近は、ローンの支払いや消費者金融からの借り入れなどで借金が増えていま …
-
-
年齢を偽って借金をした未成年の息子の借金を支払う義務は親にあるか?
Aさんの息子は19歳の学生で、親元を離れて一人で住んでいますが、先日息子から消費者金融から45万円の借金をしてしまい、自分では払えないから払ってくれないかという連絡がありました。 どうやら息子は19歳であるということを相手方の消費者金融に告 …
-
-
契約書をなくして再度和解した後に前の契約書を発見した場合どちらの契約が有効か
Aさんは、昨年友人に「期日は今年の12月で全額一括で返し、利息として1万円を上乗せする」という条件で20万円貸しました。 条件と同じ内容の借用書を書いてもらいましたが、Aさんはその借用書をなくしてしまいました。
-
-
なくした免許証や保険証を悪用されてお金を借りられてしまったらなくした本人に返済義務はあるか
Aさんは先日運転免許証をなくしてしまいました。 どこで落としたのか、家の中で紛失したのか、見当もつきません。 仮に屋外で落としていた場合、拾った誰かがその運転免許証を悪用し消費者金融や闇金などで借金をしたら、Aさんにその借金の支払い義務はあ …
-
-
保証人でないのに家族の借金の返済をせまられたら
Aさんは両親と一緒に暮らしていますが、あるとき父親が株式投資に手を出して失敗し借金を作ってしまいました。 複数の貸金業者から借り入れをしているようで、貸金業者が度々自宅を訪れたり、電話をかけてきたりします。 Aさんがその対応をしていたところ …
-
-
承諾なしに家族の借金の保証人にされてしまったら
Aさんは、独立して一人で暮らしていますが、先日、実家の父親が借金をした際に、Aさんを保証人にしたということを聞かされました。 Aさんはこの父親の借金について今まで何も聞かされておらず、保証人になることを承諾した覚えもありません。