未成年者が年齢を偽って交わした契約を後から取り消すことができるか?
引渡しの際に相手から年齢を聞かれたので、A君は自分とそっくりな兄の免許証を見せ「21歳である」と偽りました。
安心した相手に、A君は代金の半額を支払い、残りの半額はアルバイト代が入る来月に支払うという約束をしました。
しかし、翌月のアルバイト代が少なかったため、自分が未成年であることを理由にパソコンを買うことを取り消そうと思いました。
このような場合、この契約の取り消しは認められるのでしょうか?
民法に未成年者を保護する規定があり、原則として、例えば未成年者が契約をする場合には、親の同意を得なければいけないと定められています。
今回のように未成年がパソコンを購入する場合、親にパソコンを買うということを了承して、同意してもらうということが必要になり、もし同意がない場合はパソコンを買うという売買契約は取り消すことができます。
このA君の場合、同意がないので結果的に取り消すことができるというのが民法の規定です。
その主旨は、未成年者であるため大事な契約を結ぶだけの能力が不十分であり、未成年者を守ろうという規定です。
ただし例外があり、今回のように偽りの免許証を見せ、自分が20歳以上の成年であると積極的に嘘をついた場合、先ほどの法律の主旨から考えて、そういう人は保護される対象になりません。
ですから、民法では、そのような積極的な詐術を用いた場合には、その契約は取り消すことができないという規定をしています。
売買契約を取り消すことができないので、契約は当然成立しており、成立しているんであれば、お金を払わなければいけないということになります。
今回の場合、基本的には、A君は未成年なので、本来は親の同意がなかった場合は、取り消すことができますが、今回は自分が青年であると信じさせる為に、積極的な手段を使った詐術ということで、20歳以上だと嘘を言ったため、契約を取り消すことはできないということになります。
今、顔が見えない状態でもインターネットで簡単に、取引をする場合もありますから、このようなトラブルは多いと思います。
トラブル防止のためには、売る人は相手が未成年者であるかどうかをしっかり確認するのがいちばんいい方法です。
売る方も買う方も、しっかり確認して気をつけて取引しなければいけません。
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