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相続においてビデオテープによる遺言は無効?

父親を亡くしたAさんは、遺産の分配を巡る家族会議を行いました。
遺産の大部分はAさんの父親と妹が一緒に住んでいた家と土地がほとんどで、相続人はAさんを含む兄弟3人で、妹以外は家と土地を売り、そのお金を分配したいと考えていました。
しかし妹は、父親が妹にこの家と土地を譲ると話しているビデオテープ出してきて、この遺言がある以上、家と土地は私のものだと主張しています。
妹以外は父親の家と土地を売り、お金を分配したいと考えていますが、妹の主張通り家と土地を譲らなければならないのでしょうか。
相続においてビデオテープによる遺言は無効?

ここでのポイントは、ビデオテープでの遺言がはたして有効な遺言といえるかどうかになります。
民法では争いごとを防ぐために、遺言にはかなり厳格な行為を要求しています。
亡くなった後の財産の帰属などは大事な問題なので、きちんとした遺言でなければ認められないことになっています。
遺言には、普通法式遺言と特別方式遺言の2つの方式があります。
普通法式遺言には、自筆証書遺言と公正証書遺言と秘密証書遺言の3つがあります。
1つ目の自筆証書遺言は、遺言者自身が自分の自筆で作成した遺言ということになります。
この中にも厳格な要件があり、本人が遺言の内容を全部自筆しなければならず、ワープロなどは認められません。
また、日付が書いてあり、氏名も自書してあり、三文判でもいいので判子を押してあることが要件です。
2つ目の公正証書遺言は、一般的に使われているもので、公証役場に行き、公証人に自分の遺言の内容を申し伝えて、公証人が遺言を作成して署名、捺印します。
公正証書遺言も本人の署名が必要になります。
また、本人はもちろん、この場合には承認となる人が2人以上が必要になります。
3つ目の秘密証書遺言は、遺言の存在は明確にしておきたいが、遺言の内容は秘密にしておきたいという場合の方式です。
秘密証書遺言にもさまざまな要件がありますが、自筆証書遺言に比べ、偽造・変造のおそれはありませんが、紛失したり発見されないおそれがあります。

今回のケースは、ビデオでの遺言ということで自分で書いたものじゃないということになり、自筆証書遺言の要件は満たしていません。
また、公正証書遺言や秘密証書遺言にもあたらないので、結果としてビデオテープによる遺言は認められないということになります。

従って、このAさんのケースでの遺産相続というのは、兄弟が3人いるので、それぞれの法定相続分でいけば、各3分の1が法定相続分になります。
それを協議した上で、妹には少し多く遺産を分割することでも構いません。

しかし、妹がどうしても納得しない場合は、協議が整わないということになり、最終的な方法としては家庭裁判所に遺産分割の調停を申立てするなどのかたちになると思います。
そうなると、調停裁判や審判ということになってしまいますので、全員が納得できるように協議して、遺産を分割することが大事です。

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